SOS団のSOS!?涼宮ハルヒが残した足跡は彼女とは別に続く!

「ただの人間には興味ありません!」
このセリフで、彼女は多くのファンを得ました。
『涼宮ハルヒの憂鬱』は、思春期らしい悩みと行動だけに留まっていません。

古典SFをラノベにした名作

2003年6月に角川スニーカー文庫から発売された、『涼宮ハルヒの憂鬱』。
第8回スニーカー大賞で、堂々の大賞!
2024年においても、「ラノベ発行部数で爆発的な売上」の記録を持っています。

このラノベは、古典SFの定番である「宇宙人、超能力者、未来人」を分かりやすく表現。
涼宮ハルヒを中心に、上手くまとめました。

主人公は、同じ県立北高校に通い、ハルヒのクラスメイトでもあるキョン。
10巻を超えるシリーズなのに、本名が明かされていません。

言い換えれば、キョンは語り部にすぎず、あくまで涼宮ハルヒが主役!
『シャーロック・ホームズ』と同じ、「自分勝手な天才と常識的なパートナー」の構図です。

SF・ミステリーと無関係の人気

『涼宮ハルヒ』は、2006年のアニメ化で、社会現象になるほどの人気へ!
ようやく携帯電話が普及して、ニフティがパソコン通信を終えたぐらいの時代です。
YouTubeの大ヒットによる、ニコニコ動画にも繋がっています。

VHSのビデオテープからDVDへ。
「店舗へ行き、数日だけ借りる」というレンタルショップの全盛期に、ハルヒが席巻したのです。

サービスシーンはあれど、露骨な場面はゼロ。
高校の部活、それも陰キャがやっているはずの文芸部で、癖のある部員たちが大騒ぎ♪

原作の『涼宮ハルヒの憂鬱』は、セカイ系のSFで、同時にミステリー。
複雑に絡み合った線をたどっていけば、様々な事実が見えてきます。
けれども、それらの面白さとは無関係で、「陽キャのようなバカ騒ぎ」に注目されました。

ニコニコ動画を支えたハルヒ

YouTubeの派生である、ニコニコ動画。
国内で「コメントと共に放送する」という、革新的な試みでした。
京都アニメーションによる美麗な描き込みと相まって、アニメEDと同じ動きによる「踊ってみた」動画をアップする人が急増。
その人気は、リアルの文化祭でも披露するほど。

コンテンツの著作権が、法律や制度で整えられていた時期。
ニコニコ動画にも、今では違法アップロードとなる動画が目立ち、勢いがありました。

もし、アニメ化が失敗していたら。
もし、高校の部活ではなく、宇宙戦争をするSFだったら。
もし、ネットと使いやすいパソコンが普及した直後でなかったら。
もし、ニコニコ動画がなかったら。

フィクションでやりたい放題の『涼宮ハルヒ』は、リアルの中高生も動かしました。
彼らはSFに興味がなく、ただ面白いから集まって、一緒に騒いでいただけ……。

騒ぎに騒いだ祭りの後

アニメキャラにして芸能人との全国CMを実現した涼宮ハルヒが団長のSOS団。
けれど、8週連続で同じエピソードを放映した「エンドレスエイト」で、全てが終了!

2024年には想像もできませんが、当時はアニメが少なく、情報源はアニメ雑誌だけ。
ネットが日常を塗り替えていくプロセスに乗っかった、お祭り騒ぎの一環でした。
よく見れば、8回で微妙に異なっており、嘘か誠か、全て制作して、アフレコもしたとか……。

永遠に続く、夏休み。
このテーマはSFの古典で、「リプレイ」と呼ばれる分野。
『うる星やつら』の「ビューティフル・ドリーマー」が有名です。

エンドレスエイトは、今のようにサブスクで見て、場面も移動できる環境に合っていません。
当時ですら脱落したファンが大半を占めたうえ、アンチに変貌。
2010年には劇場版『涼宮ハルヒの消失』が上映されたものの、ハルヒのブームは終息しました。

一般文芸とラノベを変えた団長

内容は、古典SFです。
けれども、ネットが現実に普及していき、「車1台と同じ金額を支払い、プログラムができるオタクだけの装置」だったパソコンが当たり前になっていく過渡期に、よくマッチング。

その中で消費された『涼宮ハルヒの憂鬱』は、2019年に角川文庫から一般文芸の装丁で復活。
元々、SFファン、ミステリーファンの熟読に耐えうる内容ゆえ……。

ともあれ、久々の新刊である『涼宮ハルヒの直観』は、従来の角川スニーカー文庫でした。
アニメや古参のファンを大切にした判断。

この『涼宮ハルヒ』のリアル世代は『小説家のなろう』へ移っており、その系譜に。
オタクを一般化した立役者にして、ラノベとアニメ業界も変えたSOS団の団長は、やはり偉大です。