返本制度を知らずしてラノベを語ることなかれ!三者三様の嘆き!?

無事に書籍化しても、次の試練!
リリースから2週間で、すぐ打ち切り?
業界人の視点となり、その流れを見てみましょう。

取次による返本制度

出版社は、作家と専属出版契約を締結したうえで、一定の部数を刷ります。
執筆した作家はその部数に応じた印税をもらい、ひとまず終了。

いざ販売される書籍は、返本することが可能!
多くの書店が、1~2週間で売れなかった本を返します。

販売ルートは、取次とりつぎによって書店へ。
仕入れから一定期間だけ、「同じ価値があるもの」として返本できる。
この仕組みにより、様々な本を陳列(買い切りも)。

売った本が戻ってくる出版社は、戦々恐々。
返本率は40%で、大きな負担です。

出版社が儲けるラインは遠い

新人のラノベを出版する場合――

  • 作家に支払う印税(5~8%)
  • 製作費(編集、校正、デザインなど)
  • 印刷費と製本費
  • 取次と書店に支払う流通マージン(慣習的に50%)

これらの費用が計上されるため、出版社はペイすることが必須!

小説のラノベ単行本は、2,000部ぐらいが損益分岐点。
これを下回れば、赤字となるうえ、今後の売上も見込めず、打ち切りの可能性が高まる。
ちなみに、紙の実売数でカウントします。

書店員から見たラノベ

返本制度により、スピード勝負!
定期的に届く雑誌を入れ替えつつ、古いほうは段ボール箱に詰めて、運送業者へ。
いっぽう、文庫本、大型本といった、しばらく陳列する本も。

1,500円を超えた、最近のラノベ。
絵本と同じサイズになったことで、置き場所に困る。
人気シリーズを配本してもらうため、売れない本も一定数の引き取り。
出版社の営業マンがくる場合は、そちらが推したい本を平台に積み上げ、キャッチコピーやイラストを描いたPOPで特集コーナーを作る。

売れる作家は、書店に顔が利くことも多い。
となれば、その新刊を無下むげにできず。
本部が決めるチェーン店であれば、現場は従うのみ。

目立つところに並べて、タイムリミットの2週間までに返本。
今は1ヶ月に1冊という次元ではなく、目立つ平台にあるのは、せいぜい1週間。
『魔法科高校の劣等生』のように売れる新刊と重なったら、数日ないことも?

「実売による印税」という恐怖

ラノベ作家を目指している方に、ショッキングな情報をお伝えします。
2025年、小説投稿サイトから書籍化する場合、5%で実売ベースの印税が当たり前!

定価1,500円のラノベで、印税5%、実売1,000部としたら……。
1,500 × 0.05 × 1,000 = 75,000円

1,000部しか売れない場合は、高い確率で打ち切り。
編集に指示されて、半分ぐらいの加筆修正をやっても、金一封だけ!

厳密には、コミカライズの原作料、電子書籍の印税もあります。
それを合わせても、2倍にならないでしょうけど……。