灰の魔女イレイナは20巻オーバー!電子と紙をまたいだ冒険とは?

「書籍化して、電子書籍」
このケースはよくあっても、その逆はめったに見られず。
20巻を越えた『魔女の旅々』は、その代表例です。

Amazon kindleから商業化

『魔女の旅々』は、白石しらいし定規じょうぎ先生が、ご自分で電子書籍に。
2014年にAmazon kindleで自費出版して、自ら2ちゃんねるで宣伝!

まとめサイトに取り上げられ、話題作に。
縁があったGAノベルで、2016年4月から書籍化!
2020年秋アニメとして、1クール放送まで!

これは、「どのように自作をアピールするのか?」についての回答。

プロの作家になりたく、ラノベ系でどんどん応募して、地力があった方です。
その先生ですら、「多くの電子書籍に埋もれたまま、話題にもならず」という状況……。

どちらかと言えば文芸作品

灰の魔女イレイナは、様々な国を渡り歩きます。
「自分を普通の旅人と考えなさい!」の教えを守り、危険と感じたら、すぐ逃げる方針。

悲劇に遭遇しても、イレイナは原則的にノータッチ。
ただほうきに乗り、空を飛んでいくだけ……。

なろう系の主人公は、チートで無双して、「ほら? 助かったでしょ?」とドヤ顔。
異世界ファンタジーでありながら、イレイナは真逆です。
割れたポットを元に戻せるほどの魔法を行使しながら、それを威嚇に使うのみ。
可哀想な少女を助けず、何も指摘しないまま、立ち去りました。

ライトノベルではありますが、これは文芸作品。
剣と魔法、それにモンスターがいる世界で、生々しい人間模様が繰り広げられます。

賛否両論で真っ二つのアニメ

アニメ版は、映像に向いているエピソードで。
第3話の前半「花のように可憐な彼女」により、ネットの話題をさらいました。

イレイナは全てを知りつつも、何のフォローもせず、立ち去ったから……。

彼女は母親の教えに従い、危険から逃げました。
けれど、視聴者は納得できず、「どうして救わなかった!?」と非難囂々ひなんごうごう
「彼女には関係ない!」と擁護する意見も。

このように、ライトノベルでありながら、文芸的なエピソードが続きます。
しかし、これは『小説家になろう』に侵食されている現状への良い刺激です。

ラノベ作家の新たなモデルケース?

私が注目したのは、「Amazon kindleから書籍化」という経緯。
ちょうど、「消費税10%」や「STAP細胞論文」が話題になっていて、まだ2004年の『電車男』の影響が残っていました。

2ちゃん発の純愛ストーリーとして、『電車男』はモテない男に希望を与えました。
2014年ならば、まだ『2ちゃんねる』の力を信じられる時期。

しかしながら、2010年から普及したスマホとSNSアプリで、2ちゃんは過去に……。

『魔女の旅々』が成功したのは、先生の努力と人柄、何よりも作品に魅力があったから。
だけど、「2ちゃんで宣伝」となれば、「オモチャにされての大炎上」もあり得ました。
リスクが高かったことは、否めません。

ヒットしても続かない業界

芸術家、クリエイターは常に、「自分の作品をもっと知らしめたい!」と願います。
先生の宣伝行為は、「諦めずに行動して、チャンスをつかむ!」というモデルケースです。

でも、今の時代に「SNSで宣伝すれば!」とはなりません。
それは当たり前。
小説投稿サイトの会員登録で、SNSのアカウントを入力できるぐらいに……。

リアルの知り合いに宣伝しまくるとか、それぐらいの根性が必要。
まあ、「コンテストで入賞しろ」の結論になりますが。

小説投稿サイトの流行りが、次の人気ジャンル。
『魔女の旅々』を後追いしても、それがズレていたら、書籍化は無理でしょう。
ヒットしても、次回作を出すには、自分で人気をとらなければいけない業界です。